《第一一回空華文学賞》
第一一回空華文学賞は、「紅の眉」豊田旅雉著に決定しました!
第一一回空華文学賞は、令和8年の春に募集を開始し、6月30日に締切られました。総数にして、12篇の御応募が御座いました。平均枚数は、91.50枚でした。応募作品は以下の通りです。一次選考通過作品には○を、二次選考通過作品には◎を、受賞作には★を、それぞれ付してあります。
| 烏の巣 | 川越地星子 | 95枚 | |
| さよなら、トシ江ちゃん | 鷺町一平 | 58枚 | ◎ |
| 古いベンチ | 藤川六十一 | 81枚 | |
| 紅の眉 | 豊田旅雉 | 100枚 | ★ |
| 頭ポンポンはセクハラです! 〜不器用地味子の恋のお相手〜 | 山川陽実子 | 55枚 | ◎ |
| 木人 | 井上たがれ | 128枚 | |
| 消えた男 | 浅野トシユキ | 77枚 | |
| 欲望 | 芝川優名 | 148枚 | |
| 魂の監獄 邏生塔 | 小原友紀 | 128枚 | |
| 三十前後 | 中村卓 | 92枚 | ○ |
| 遥かな旅路 | 竹中潮 | 85枚 | ○ |
| 真夏の夜の「選択」 | 城下真知 | 51枚 | ◎ |
今回は、尋常ならざるほどに作品の集まりが悪く、このままではこの賞をとりやめにしなければならないのではないかと思うくらいでしたが、終盤に多く集まってきて、なんとか12作品集まりました。しかし、それでも空華文学賞史上、最少の応募作品数となりました。
そのため、あまり面白い作品が集まっていないのではないかと懸念しましたが、割合面白い作品も多く、二次選考は6作品残りました。二次選考では、評価の結果がはっきりと上中下それぞれ二作品ずつに分れましたが、常ならば上位2作品を残すところ、選考係の合議でたまたま、上中の4作品を残そうということになり、二次選考を4作品通過という、今度は史上最多の最終選考候補作品が残ることになりました。
最終選考会は、もう一度選考係各自作品を熟読した後、オンラインで8/2(日)に行われました。3時間の討論の後、「真夜中の夜の『選択』」と僅差でしたが、第一一回空華文学賞に「紅の眉」が選ばれました!
豊田旅雉様、おめでとう御座います!
歴史小説としては、よく調べられているし、とても面白い小説です。前漢と後漢の間の新王朝のことについては、ほとんど知らなかった選考係でしたが、その一端を知ることができて、興味深く思いました。
この呂母の乱から発して、赤眉の乱が起り、それがもとで新が滅び後漢になったという流れらしいですが、そのあたりのことも、もう少し付記として書いておけば、世界史に疎い僕のような者でも、判りやすい気がしました。
テーマとしては、敵討ちは正義であるのか、という疑義や、現政権のような腐敗政治に対する批判的な物の見方などが、感じられますが、歴史小説であるためか、それほど強いテーマが感じられるわけではありません。もう少し、当時の政府の理不尽さを辛辣に描けば、テーマが強く浮き上がってきたのではないでしょうか。
政府の理不尽な仕打ちで殺された例と言えば、森友問題の赤城さんなどが真っ先に浮ぶけれど、うまく天罰が働いたのか、安倍元首相は無残な最期を遂げ、そのあたりは、この小説のテーマとほぼ同じことを言っているために、世の中の真実として、訴えることも充分可能です。
反面、そのような理不尽な境遇に晒されても、少しも屈辱をすすげない人たちもいるわけであり、この史実が示すとおりに、天罰が下ったようになればいいのですが、世の中の普遍の真実とまではいかないテーマでもあります。
この小説では、呂母は少年たちに助けられたり、運良く官軍の人たちを味方に付けたりして、敵討ちを果たしているために、そこには運命というものの未知なる力が働いているとは思えるのですが、その運命の力をもう少し上手く描いたなら、かなりの感動作品になっていたことでしょう。
たとえば、吉川英治の「三国志」では、五丈ヶ原に果てた孔明のような、人の力では抗えない運命の非情な力というものが描いてあります。そこまで、雄大な運命の力を描くのは、なかなかこの枚数では難しいかもしれないのですが、歴史小説の一つのロマンではあるために、そのあたりをもう少し追求してほしい気もしました。
しかし、総じて、中国の歴史に疎い者が読んでも、充分楽しめる小説でした。