この小説は、大坪命樹が藍崎万里子に捧げた第二作です。藍崎は、山口の出身なので登山経験はまったくなく、大坪は一緒に楽しみたかったのですが、現実的に難しいかもしれないと、小説の中でだけでも思いを実現させるべく、書かれたものです。
小説の筋は、だいたい、以下の通りです。
登山家風情の佳助は、ある日自分のブログに妙な書き込みを見付けます。地位も財産もない自分のような男に、このような好意的なコメントが来るのは変だ。コメンターは、女性を装っているが、その保証もない。スパムコメントの可能性も考えましたが、結局佳助は、登山の素晴らしさをシェアしたい一心で、返事することにしました。
コメント欄で話してみると、彼女は遊希と言う、中国地方に住む女性で、登山経験はありませんでした。佳助は、山に連れにいくだけのはずが、徐々に彼女を好きになってしまい、遠距離恋愛することになるのでした。
同人メンバーの深井了をして、「愛の小説」と絶賛された、大坪命樹と藍崎万里子がモデルの、夫婦の恋愛小説です。登山の情景描写あり、あちこちのデートスポットの描写ありと、風光の美しさがよく描かれる中、登山と愛が描かれます。
人は何故山に登るのか、人生とは何なのか? 若い頃、登山していた経験をもとに、大坪が描く登山小説は、期せずして哲学的であり、独自の世界観が広がります。
小説家の中沢けいさんの感想も巻末に付いており、「水源から湧き出たばかりの水を飲むような清涼感」との好評を得た、大坪命樹の代表作です。(大坪命樹)
