澤山功一

CMでもパロディで使われていた「桃から生まれた桃太郎」。大きな桃がどんぶらと流れてきたのを「パッカーン」と割ったら出てきた元気な男の子。

さて、まだ富山市立図書館が、松川沿いにあった頃、一人の読書好きの婦人が「島崎藤村」」の作品を手に取り、広げてみると「オギャー」と産声を上げて誕生したのが、このワタシ、澤山功一です。

という出鱈目小話を信じる人はまずいないでしょう。しかし、「この文章の筆者」の「母親」は、富山中央病院にて「藤村」を読んでいる時に陣痛を起したのは嘘八百ではなさそうです。今も富山市安野や近辺を散策すると、大昔、母親に手を引かれて、市立図書館へと、本との出会いを求めて落葉松を踏みしめていくのを思い出すのです。(このマザコン野郎! などと言うなかれ。どうせ男の9割はマザコンだぞ)

澤山さんは、無刀会の正式なメンバーではありませんが、第四号に寄稿して戴いた空華の著者の一人であります。

なんでも、過去に北日本文学賞の第二次選考を通過したことがあるという実力有る書き手で、無刀会としても縁のあることは誇り高いことであります。

私(大坪命樹)と同じ職場で働いておられますがその働きぶりは真面目で、そういう態度が小説の創作するときと共通のものであるのか、澤山さんの書く作品にはとても味わい深いものがあります。

空華著者の中では最年配でありますが、今後も空華に寄稿して戴ければ、ありがたいことこの上ありません。

澤山功一氏は、平成29年6月に不運なことに心筋梗塞で逝去なさいました。実力のある書き手だっただけに、無刀会としても、大変惜しい人を亡くしてしまったと、無常の浮き世を思わずにはおれません。よわいもまだ53であり、まだまだ人生はこれからだと言うときに、澤山氏は御不幸にも薨られました。御故人の御冥福を祈るばかりです。安らかにお眠りください。