ジオハープの哀歌B6判222ページ

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東京の湾岸地域に自宅を持つ日外建築士は、日中は内陸の事務所に働きに出ている建築士です。そんなときに、東京湾を震源とする大地震が起こり、日外は家族を失ってしまいます。多くの犠牲者が、その首都圏大震災で犠牲になり、政府は首都復興を急ぎます。建築士の日外は、毎日激務に追われることになります。

そんな中、震災時に聞き知った思い出の曲を歌うシンガーソングライターに出逢うのでした。彼女は、秋月梓と言って、首都圏の復興のために、チャリティーコンサートの巡業を積極に的に行う、理想の高いアーティストでした。日外は、彼女に一目惚れしてしまいます。そして、彼女にとんでもないプレゼントをしようと目論むことになります。

このアーティストは、じつは作者大坪命樹の憧れの人であった柴田淳をモデルにして書かれたものであります。柴田淳も、東日本大震災に際して、「道」という名曲を作っており、その後も復興に関して協力的な活動を繰り広げました。その彼女に、ファンとして大坪命樹が捧げた小説が、この「ジオハープの哀歌」であります。

「ジオハープ」というのは、直訳すると「地琴」となりますが、地震のことを示した造語です。しかし、大坪はこの「ジオハープ」という単語を、秋月梓のメタファーとして、あるいは、地震を起す大地として、題名に設定したところがあります。ガイアが秋月梓を通じて歌った哀歌とは、どのような響きだったのか、そこを読者のみなさんには、じっくり味わって戴きたく思うとこです。

反政府的な要素も入っておりますが、あまり政治的なメッセージはそれほどありません。そのようなものよりも、むしろ建築家日外の夢物語のような目標を成就させるサクセスストーリーとして読めば、興味深く楽しめると思われます。

恋愛に大きな夢を抱くことのなくなった最近の人々に、ぜひ読んで戴きたい小説です。