深井了詩集一B6判118ページ

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深井了さんは、富山県の歴史ある同人誌「渤海」「裸人」にて、若いときから小説や詩歌などの寄稿を続けてきたとやま同人誌会の老宿です。自身ではなかなか語りたがりませんが、紆余曲折と挫折再起を繰り返した、波乱の人生を歩んだ方です。

現在老境に差し掛かった彼は、若いころに書き付けたノートを振り返り、その中から詩歌をピックアップして纏めることにしました。この詩集は、その第一弾です。

深井さんの小説を読んだことのある人であれば、彼らしい世界だと納得のいくような、不可思議な詩歌が収められています。これらの文学は、シュルレアリスム的な世界ではありますが、深井さんの言を借りると「頭の中で考えただけのものは良くない」あるいは「小説は真実を書くものだ」という哲学が、この詩集の背景に屏風のように、しずかに屹立しています。

シュルレアリスムというのは、無意識的なものを自分に統合するというような、フロイトの哲学的影響を排除できないものでしょうが、深井さんの文学哲学とは相容れるものであるのか、あるいは、深井文学のシュルレアリスムに対する位置づけは、どのようになされるのか、そのようなことを理解する一助にも成る、貴重な詩集であります。

ともすれば、子供の落書きとも揶揄されかねない、滑稽で独特の落書きのような詩歌たちですが、じっくり読むとその真価が、味わい深く浸み入ってくるようです。