「悟りを忘れた現代人に、万物の生きる意味を問う」なんか、仰々しい帯コピーを戴きましたが、その実、それほど完璧な名作というわけではありません。
悟り人の話を書きたくなりましたが、お釈迦様の伝説を、ひとつひとつ検証して取拾選択するほとの学識もなく、とりあえず有名どころの釈尊伝説を読んでみて、それを元に似て非なる作中人物「百迦」を設定して、書き上げました。
ですから、お釈迦様の伝奇小説ではつゆなく、全くのフィクション小説です。舞台の場所すら、地球上の何処にもありえないような空想上のものです。その上、描かれている時代年代が、全く無記述です。ある昔に、地球上にそんな場所があったと仮定して、読んでいただければ幸いです。
本書には、表題作「菩提人」のほかに、「作られた精神」が収載されています。これは、どこの商業賞にも出さなかった未発表の作品です。私の強制入院の痛い経験をもとに、いろいろ構想を練って書き上げた作品です。事実とは異なっていますが、統合失調症の患者さんには、ぜひ一読戴きたい商品です。(大坪命樹)