サリエリの庭文庫判96ページ

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アメリカで、アカデミー賞も獲ったハリウッド映画『アマデウス』。そこでモーツァルトに嫉妬し陥れる、そんな主人公に設定されていたアントニオ・サリエリ。彼は実際は、十八世紀から十九世紀にかけて、ウィーンの音楽界の頂点を極めた人物でした。徳も高く、善行の人で、誰からも愛され、音楽教師としても相当に秀でていました。

そんな彼が、晩年、死の直前になって、なぜ狂ってしまったのか? いろいろな説がありますが、当時の音楽界では、イタリア人勢力とドイツ人勢力が戦いを続けていて、イタリア人勢力の代表格だったサリエリが犠牲になって血祭りにあげられて、そのショックで狂ってしまったのではないか? などとも言われ、非常に興味深い事件となって今に伝えられています。

今回、それを、ちょっとした解釈を加えて、藍崎が物語にしました。

映画では、結婚していないことになっているサリエリですが、記録があまりない中でも、結婚していて、七人の子供がいたことは分かっているので、なるべく史実に忠実にするために、奥さんと、生き残ったであろう三人の子供たちを出演させています。なにぶんにも、歴史から消えた音楽家なので、多くの部分は作るしかありませんでした。そこのところは、どうぞ御了承下さい。

この物語の流れの中には、いろいろな宗教が織り交ぜられています。若い頃に得た栄華をすべて失ったサリエリは、果たして救われるのでしょうか? そして、救われるとしたら、それはどんな形で? それが色濃く表れる、この物語の終わり方については、様々な意見を頂戴しています。

モーツァルト、ベートーヴェン、シューベルトなど、有名音楽家がたくさん出てきます。その絡みだけでも、わりと楽しめるのではないかと思いますので、どうぞ、歴史に詳しい方も、よろしければ目くじらを立てずに、お楽しみください。