これは、モーツァルトとベートーヴェンのお話です。
題名の「アマプレベス」というのは、ラテン語で、「大衆に愛されし者」という意味です。
モーツァルトのミドルネームの「アマデウス」は、映画の題名にもなりましたが、こちらは「神に愛されし者」。それに相反する言葉として、「アマプレベス」と名付けました。
モーツァルトとベートーヴェンが、二週間の間だけ、一緒にウィーンで過ごした。ということになっているお話ですが、これには何の根拠もありません。
一応、1787年春に、ベートーヴェンはウィーンに行きます。行ったことは確かな記録として残されています。しかし、そこでモーツァルトに会ったのか? 会わなかったとしたら、二週間もの間、ベートーヴェンはウィーンで何をやっていたのか? 全く記録には残っていません。
モーツァルト研究家の第一人者である海老沢敏先生は、モーツァルトの完全な沈黙を根拠に、二人が会った可能性を否定していらっしゃいます。ただ、ベートーヴェン研究家の青木やよひ先生は、ベートーヴェン側の証言が多少遺っているためか、二人は出会ったのではないか、と書かれています。研究家によって、考え方が違うようです。
この作品は、そんなわけで、この時の記録が全くないので、ほぼすべてが創作です。
二人は、出会って、話をしますが、折り合えるのか、折り合えないのか。ここではモーツァルトを女性として描いているのですが、二人は恋をするのか、しないのか。うまくいくのか、いかないのか。
小粒でない大芸術家が二人揃ったら、どんなことになるのか。
すべて、私が勝手に想像して書きました。
拙い作品ですけど、よろしければどうぞ。(藍崎万里子)